第93章 あの子、少し心が揺らいだのかな

別荘の前では、ぽつりぽつりと足元灯がぼんやりと灯っていた。薄暗い光の中、二階へ向かって中野蓮が声を張り上げる。

「ママ——!」

長谷川栞の胸が、ほんの少しだけ揺れた。

階下で必死に手を振る蓮。その真っ直ぐさが、痛いほど伝わってくる。

ここ数日、蓮はときどき菓子や果物を持ってきていた。

けれど、今夜は——。

警備員からの電話を受けた長谷川明子が上着を羽織り、慌てて玄関へ駆け下りる。

「蓮? こんな遅くにどうしたの?」

「おばあちゃん、ママに夜食! この団子、すっごくおいしいんだよ」

蓮はそう言って、手に提げた包みを持ち上げた。きちんと箱に詰められた団子が二つ。

明子は喉の奥...

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